労務・経営にまつわるコラム

『水戸の五労考』バックナンバー

社労士ミトオフィスのニュースレター『水戸の五労考』バックナンバーより、中小企業の労務管理にまつわる記事を抜粋して掲載します。

「使ってやってくれ」への対応

「使ってやって欲しい」。ここでの意味は「雇ってあげてくれ」「働かせてやってくれ」。 身内や先輩など断りづらい人から頼まれて困ってしまった経験のある方も多いのではないでしょうか。
このような経緯で採用した社員は、あまり戦力にならないケースが多いものです。その理由は最後にちょっとだけ分析しますが、「コイツを使ってやって欲しい」と言われた場合に備える一案を考えます。
やはり、既存の社員の手前、無条件で採用するわけはいきません。 その入社希望者が、自社のこと、業界のことをどれだけ知っているのか(調べたのか)。また業務に必要な技術や経験は持っているのか。これらを証明してもらことは必須です。
そこで、入社を希望する人は(誰であれ)必ず通らねばならない一連の流れを作ります。 例えば、必ず読むべき会社資料や業界に関する文献などを決めておく(ちゃんと読んだかテストして確認)、履歴書・職歴書・志望動機文など自筆で書いて提出してもらう書類を決めておく、適性検査を必ず行なう、面接は省略しない、など。 このよう自社オリジナルの採用の流れをパッケージ化、ルール化しておきます。ルールですから経営者といえど破るわけにはいきません。
紹介された入社希望者が、本当にやる気があって優秀な人材であれば、自社の採用パッケージを通過するでしょう。 一方、自社に合わない(採用できない)人材であれば、「推薦はしたんだけど・・・」と言って断ります。仕方ないです。
このように、特例の許されない採用パッケージを作っておくのはどうでしょうか。
最後に、「使ってやってくれ」と紹介された人物(入社希望者)について分析してみます。 そもそもこの人は自力で就職活動をしたのでしょうか。自分では就職活動をせずに力のありそうな身内に頼んだとしたら・・・あるいは就職活動したがどこにも採用されず力のありそうな身内に泣きついたとしたら・・・いずれにしても戦力となる優秀な人材である可能性は低いです。 しかし、紹介者との関係上、無碍には断れないので「特例なき採用パッケージ」を作りましょう。(2013年執筆)

たかが整理整頓、されど・・・

事務所、デスク、作業場の整理整頓や掃除に関し、漠然と「キレイにしとけ!散らかすな!」と注意していないだろうか?
今、整理整頓を、労働時間内の業務命令として指示し徹底させる会社が増えている。
あるビジネス誌が発表したデータによると、一般的オフィスワークの現場において、年間労働時間の10%~15%が「探し物」の時間になっているという。これは衝撃的な数字だ。しかし、「確かに」とうなずける数字でもある。
1週間の労働時間を40時間とする。1年は約52週なので、年間2,080時間。その10%といったらおよそ200時間だ。200時間も「アレはどこだ?」「コレはどこだ?」と探し物・・
さらには、会社の年間人件費の10%を考えてみていただきたい。放っておけない事態であることは明白だ。
整理整頓や掃除を、給料が発生する"業務"としてやらせることは抵抗があるかもしれない。 「そんなものは個人の裁量だ」「デキるヤツは言わなくてもキレイにしている」・・・おっしゃるとおりだ。
しかし、整理整頓を"業務"としてやらせたとしても、全労働時間の10%も使うことはない。せいぜい15~20分、労働時間8時間として、わずか3%だ。 それに、従業員個々の任意の裁量に任せると、全員に徹底させることができない。厳しく指摘することもできない。結果、中途半端な整頓となり「アレはどこだ?」「コレはどこだ?」で200時間・・となる。
「常に整理整頓」が、社内の慣例・文化として根付くまでは、このように業務命令としてしまうもの一考だ。 (2010年執筆)

やる気の出るタイミング

「人のやる気を科学する」をテーマとするJTBグループ企業、㈱JTBモチベーションズが、20歳~34歳の会社員を対象としたモチベーション調査の結果を発表した。その中から「やる気の出るタイミング」をご紹介したい。
もちろん経営者の立場からすれば、「おのれのタイミングでやる気を出すとはけしからん」という話だが、そこはグッとこらえていただきたい。
まず曜日。曜日では圧倒的に金曜日だそうだ。 土日休みの職場の場合なので、土日祝稼動のシフト制の場合は、休みの前日ということになる。つまり「コレが終われば明日は休みだ」となると、やる気が上がる人が多いらしい。次は月曜日。シフト制では休み明け。「休みでリフレッシュして体力もある」だそうだ。
そして時間帯。1日のうちの時間帯では午前中。やはり集中力が高いのでやる気も高い。次は夕方。「もう少しで終わりだからがんばろう」だ。シフト制では、出勤後数時間と退勤前1~2時間といったところか。
これは実に人間らしい結果だし、従業員は人間なのだから受け入れた方が無難だ。 余談だが、私が大学受験時代に聞いた話では、集中力の持続は普通の人で2時間。東大に現役合格する秀才でも3時間程度だそうだ。
この調査結果は、「重要な仕事をいつやってもらうか?」のヒントになるかも知れない。午前中、金曜日はポイントだ。 逆に、もっともやる気が低いとされる火・水・木曜の午後には、目先の変わる非日常的な仕事を割り振るのも一考だ。 火・水・木曜の午後に、一体どのくらいやる気が落ちているのか、時間帯別の生産性が測れる職場では集計してみたらどうだろうか。恐る恐る・・(2010年執筆)

研修費用を返してもらいたい

高い研修を受けさせてまで育てた社員。これからというときにアッサリ辞めてしまう。 会社からすればなんとも悲しいことだ。悲しいどころか怒りを覚えるケースもあることもあるだろう。
「研修費用を返してもらいたい」
このような話になると、立ちはだかるのは労働基準法。
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない。」(16条) ときの感情に任せて研修費用などの返還請求をしてしまっては、この法律に抵触する可能性が高い。相手はもう「辞める」と腹が決まっているから、「はいわかりました。どうぞ。」と素直に応じるとは考えにくい。
では、会社は泣き寝入りするしかないのか? -そうではない。 裁判例を踏まえ、次の事項を満たすルールを設定しておくことが対策案だ。
❑「返還せよ」ではなく、始めから研修費用を社員の個人負担にする
❑原則個人負担ではあるが、○年間勤務したら支払い免除する(最大5年。しかし慎重に検討する。)
❑研修を受けるか受けないかは、社員の判断に委ねる
❑専門性の低い一般的な研修は、そもそも会社が負担すべきもの
判例を踏まえた条件とはいえ万能ではない。 あくまでも、研修泥棒への抑止力と捉えておくことが肝要だ。(2011年執筆)

企業における懲戒処分の実態

企業組織においては日々さまざまな問題が起き、ときには秩序維持のため懲戒を行なわなければならないこともあります。一般的に、社員のどんな行為に対してどんな処分がなされているのか、(財)労務行政研究所の調査から懲戒処分の相場を見てみます。 もちろん程度による違いがありますので、あくまでも目安です。
❑戒告・譴責・・・「社有車私用」「社外持出し禁止データの持ち帰り」「就業中にパソコン(インターネット)私用」「就業中に携帯電話使用」
❑減給・・・「経費の不正請求」「会社の金庫を締め忘れ盗難に遭った」
❑出勤停止・・・「酒酔い運転(無事故)」「社内暴力」「同僚へのセクハラ」
❑降格・・・「重要なデータ改ざん」「ひどいパワハラ」
❑懲戒解雇(諭旨解雇含む)・・・「売上100万円使い込み」「取引先からの謝礼を個人受領」「酒酔い運転で事故」「無断欠勤2週間」「機密事項の意図的漏洩」「電車内で痴漢」

懲戒処分を行なうには、会社の就業規則に懲戒の種類や内容を記載しておく必要があります。
日本の社会は、罪刑法定主義です。罪刑法定主義とは、「ある行為を犯罪として処罰するためには、法令等において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、明確に規定しておかなければならない」原則を言います。(2012年執筆)

助成金をもらえる会社、もらえない会社

先日、助成金のセミナーをやらせていただく機会がありました。
その中で「助成金をもらえる会社、もらえない会社」という話をしました。
例えば、ある助成金をもらえそうなA社とB社があったとしても、必ず両社ともにもらえるわけではありません。A社はもらえるけどB社はもらえない、ということが往々にして起こります。 その違いは何なのか?
ポイントを列挙しますと  ❑ 日常から労働法令遵守しておく  ❑ 適切な労務管理・残業(代)管理  ❑ 就業規則等の整備  ❑ 労働保険料を滞納しない  ❑ 不用意に解雇者を出さない

とまあ、ごく当たり前のことなのですが、このような当たり前のことが非常に重要なのです。
就業規則だとか、賃金台帳、出勤簿、タイムカード、こういうものは、助成金の申請をするときに必ず提出しなければなりません。 日頃からきちんと管理されていれば、いざ助成金申請!となっても、そんなに慌てなくて済みますし、使える助成金もバリエーションが増えていきます。
助成金というのは、労働法令に基づいて作られる制度です。 ですから、労働法令に違反している会社はもらえない(もらいにくい)ようになっている、というわけです。(2013年執筆)

整理解雇とは JALの経営再建から

かつて経営再建中だった㈱日本航空(JAL)が、大規模な整理解雇を行った。
整理解雇とは、会社の経営上の理由による人員削減で行われる解雇のこと。 ただし、この整理解雇はそう簡単にできるものではない。「仕事が減った。スマンが今月いっぱいで辞めてくれ・・」というわけにはいかないのだ。
整理解雇をするには四つの要件があり、原則的に四要件すべてクリアしないと整理解雇は認められない。実に厳しい。
① 人員削減の必要性
本当に整理解雇をしなければならないほど、会社の経営状況は危機的なのかどうか
② 解雇を回避する努力はなされたか
解雇は最終手段。その前に役員の報酬削減、諸経費削減、希望退職者募集などの手は尽くしているか
③ 対象者選定の妥当性
解雇の対象者を、会社側の主観や恣意ではなく、年齢、勤続年数、人事考課、営業成績など客観的な基準で選定しているか
④ 手続の妥当性
整理解雇の必要性や時期、条件などについて、社員に対し充分な説明や話し合いを行い理解を得る努力をしているか


かつては、以上四つの要件をすべて満たさないと整理解雇は一切認められなかったが、最近は必ずしもすべて満たしていなくても、個別の事情を総合的に判断して「解雇妥当」とする例も出てきている。とはいえ、整理解雇というのは、一般的にイメージされているより遥かにハードルの高いものなのだ。(2010年執筆)

心拍数を上げて社内チームワークを育もう

「社員同士のチームワークが大切」「社内の連帯感を高めよう」、などとよく言われるが、おいそれとできるものではない。
ひとつの手法になり得るかどうかはさておき、「心拍数の上昇」が連帯感を生むことが心理学的に証明されたそうだ。例えば、会社の周りや近所にボウボウとたくましく生えてくる草を取るのも一案。毎日やるのは大変だし、肝心の草が数日でなくなってしまっては、せっかくの取組みも終わってしまう。隔週とか月に一度といった頻度で社員全員で草を取る。毎日の作業ではない「非日常」的作業であることもポイントなのだそうだ。
草取りはひとつの例だが、こういった単純作業かつ肉体労働、そして明確に成果が見える取組みがいい。草取りは目の前の草を数本取ったとたんにその場所がキレイになる。明確な成果が目の前にある。この小さな達成感が「無心」を生みヒトを「集中」させ、草取りを〝やってしまう〟状態をつくる。さらに、みんなでやるから小さな達成感は全員が共有しており、共同作業の最後にはみんなの成果の総決算が見え、ここに一体感・連帯感が生まれる。おまけに個々の気分も爽やかになり、会社がキレイになって気持ちがいい。このあたりは個人差があるだろうが、自分が勤める会社がキレイになって嫌な人はいないだろう。
「さぁ、仕事にかかろうぜ!」となるはずだ。希望と期待を込めて。(2010年執筆)

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